今回は、すっかり日本語になってしまっている「OK/オーケー」について書かせて頂きます。
私ども「吉祥寺MCS英会話スクール」のシニアの生徒様に限らず多くの日本人が、"OK"を前向き("positive")で肯定的な言葉としてとらえているようなのですが、コトはそんなにシンプル("simple")ではありません。前向きにとらえてよいのは、単に"OK"とだけ言う場合に限られます。
①Shall we go?→OK. Let's go. (行きましょうか?→よし、行こう。)
この例では、"OK"は「いいですよ」「わかりました」「了解」のような前向きな意味を持ちます。ところが次のような例ではどうでしょうか?
②How are you?→I'm OK. (ご機嫌いかが?→まあまあだよ。)
③Do you like sushi?→It's OK. (お寿司は好き?→まあまあね。)
このように"OK"の前に"I'm"や"It's"がくっつくと、「良くも悪くもない」「どっちでもない」といった、決して前向きでない中間的なニュアンスになってしまうのです。
私は、当「吉祥寺MCS英会話スクール」のシニアの生徒様には、「"OK"は日本語の〔いい〕に当たる言葉だと思って下さい。」と説明しています。【ただし「よい・良い」ではない点が大事です。】つまり、明るい顔で強い口調で「いいよ!」と言った時は前向きな同意・了解を示し、顔色を変えずに平坦な口調で「いいよ。」と言った時は「悪くはないね」程度の中間的なニュアンスを示し、しかめっ面で「いいよ。」と言った時には「遠慮しとくよ」的な否定的なニュアンスを表す。こんな、顔つきや言い方次第で180度意味が変わってしまうデリケートな言葉が"OK"なのです。日本語の「結構です。」と似ていますね。
④I'm sorry I'm late.→ That's OK. Don't mind. (遅れてごめんなさい。→いいよ。気にしないで。)
⑤Would you like a plastic-bag?→No. I'm OK. (レジ袋はご入り用ですか?→いいえ、私は結構です。)
レジ袋の有料化にともなって、最近ではどこの店に行っても⑤のような質問をされますが、多くの人が「いいえ、大丈夫です。」と答えているのを耳にします。考えてみると、この「大丈夫」という言葉も、言い方や場面で180度意味が変わるということがおわかりでしょう。"OK"とは、まさにそういう言葉なのです。
※なお、"OK"の語源については諸説入り乱れて、なんと定説がないのだそうです。〈ウィキペディア〉によれば、以下のように説明されています。
「歴史上、OK が最初に現れたのは1839年のボストンの新聞で、oll korrect(all correct の表記ゆれ)の略語として現れた。OK は新しい単語であるにもかかわらず、急速に広まったため、その語源についてはさまざまな伝説がある。」
おそらく、当初は前向きで肯定的な意味として使われていたものが、急速に大勢の人によって使われるようになる中で、さまざまな意味を持つようになったのではないでしょうか。日本の若者がよく使う「ヤバい」が、当初「まずい・良くない」という意味であったのに最近では「すごい・美味しい」の意味にも使われている現象と似ていると思います。
A: Do you like sushi?
(お寿司は好きかしら?)
B: Mm・・・It's OK.
(ンー、まあまあね。)
A: Is it OK if I bring my handmade sushi to your home-party?
(お宅のホームパーティーに手作りのお寿司を持って行ってもいいかしら?)
B: Of course, that's OK! I'm sure my friends will like it very much.
(もちろんいいわよ!私の友達は、きっととても気に入るわよ。)
私ども「吉祥寺MCS英会話スクール」のシニア入門クラスで、たまにこんな質問をされることがあります。
「"How are you?"と聞かれて"(I'm) fine, thank you."と答えることは覚えましたが、いつも元気とは限らないし体調が良くない時もありますよね。そんな時はどのように答えればいいのですか?」と。
私はいつもこのように答えています。
「そんな時にはただ"I'm OK."と答えて下さい。もし正直に"No good."とか"I'm sick."などと答えると、"What's the matter?(どうしたのですか?)"などと聞き返されて会話が大変になってしまいますから、それはもっと勉強してからにしましょう。」
実際、「まあまあです。」と言われて、「一体どうしたのですか?」と聞いてくる人はまずいないでしょうから。