さる3月23日、イギリスのボリス・ジョンソン首相が演説していました。ニュースでご覧になっていた方も多いと思いますが、首相は"simple  instruction"「(シンプルな指示)である。」と前置きした上で、

"You  must  stay  home!"と述べました。

この"must"ですが、学生時代に「~しなくてはならない」という意味だ、と習った記憶がありますね。でも同時に、"have  to"も同じ「~しなくてはならない」の意味だということも、思い出されませんか?この二つの表現の違いは何なのでしょうか?

大ざっぱにはこの二つは同じ意味で、使い分けに神経質になるほどのことはありません。しかし、ここではあえて厳密な違いについてお話ししましょう。"I  have  to"には「私は持っている」の意味の"I  have"が含まれている事からわかるように、「自分が~する必要性を持っている」という自発的なニュアンスがあります。それに対して"must"の方は、話す人の意志によって「~しなくてはいけませんよ」という他人からの強制力を帯びているのです。ですから、この首相の言葉には「私があなたに家にいることを強制します」というような、強い調子が感じ取れるのです。

私ども「吉祥寺MCS英会話スクール」のシニアの生徒様からも、二つの言い方の違いについてよく質問を受けるのですが、私は「ほとんど同じですから、"have  to"の方だけを普段は使うようにすればOKです。」とお答えしています。実際、"have  to"は過去形にして"had  to"(~しなくてはならなかった)という使い方ができますし("must"は過去形には使えません)、"must"よりも口語的です。

ただし、否定文にしたときだけは注意が必要です。"must"の否定"mustn't/must  not"は「(絶対に)~してはならない」という強い禁止の意味になるのに対して、"have  to"の否定"don't  have  to"は「~することはない/しなくてもよい」という、それこそ「不要不急」の意味になってしまうからです。

You  mustn't  go  out. (あなたは絶対に外出してはならない。)

You  don't  have  to  go  out. (あなたは外出しなくてもいい。)

この違いは非常に大きいものがあります。


昨晩、ボリス・ジョンソン首相がウイルス感染したという速報が入りました。イギリスの運命を左右する大変重要な人物です。一刻も早いご快癒をお祈りいたします。