今回の「新型コロナウィルス」の問題は、さまざまな《ヨコ文字言葉》を私たちにふりまいていますね。先月の「シニアお役立ち英会話」の記事でも、「ロックダウン」「クラスター」「オーバーシュート」「テレワーク」等の用語を紹介しましたが、今また「ソーシャル・ディスタンス"social-distance"」という言葉が話題となっています。

 "social-distance"は「社会的な距離」と訳され、「感染を防ぐために人と人との距離を保つ」ための一種のスローガンとして登場した言葉ですが、厳密に言うとこれは"social-distancing""~ing"形で言うべき言葉のようです。

 "~ing"のついていない"social-distance"は、本来社会学の用語で、「個人と個人の間や、集団と集団の間の距離感・親近感とか、場合によっては敵対感といった感情のレベルでの親近性の程度を表すための物差し」として使われるようです。例えば日本語で、「あの人達とは距離を置いた方がよい」というような言い方をしますが、まさにこれに当たるわけです。

They  are  keeping  a  (social-)distance  from  us.

(彼らは私たちとは(社会的な)距離を置いている。)

 このような差別的な意味合いにも使われかねない"social-distance"と区別するために、今回の案件では"social-distancing"を使う方が望ましいと思います。現に海外のメディアではほぼ例外なく"social-distancing"の方を使っています。

 日本人は《ヨコ文字言葉》を取り入れる天才ですが、時として勘違いした意味で解釈してしまったり、元の言葉を勝手に短縮・省略してしまったりする悪い癖がありますから、気をつけるべきでしょう。もっとも「コロナ騒ぎ」がここまで全世界的("global")になってしまった今、"~ing"を付けなかったからといって誤解されることはないと思いますが。


A: Will  you  stay  home  in  this  5-day  weekend?

     (ゴールデンウィーク中は家にいるの?)

B: Of  course. I  will  do  nothing  special  but  walking.

     (もちろん。ウォーキング以外は特に何もする事はないわよ。)

A: Do  you  go  walking  with  your  husband?

     (ご主人と一緒にウォーキングに行くの?)

B: No.  Of  course,  alone.  You  know,  "social-distancing"!

     (いいえ、もちろん一人よ。ほら、「ソーシャル・ディスタンス」ってね。)

A: Oh,  but  he  is  your  husband,  not  a  stranger.

     (あら、だけどあなたのご主人じゃない。見知らぬ他人じゃないのよ。)

B: Yes.  But  I  think  this  is  good  practice  for  our  lives  after  his  retirement.

     (そうよ。でもこれは、彼の定年後の二人の生活のための、良い練習だわ。)


◎「ゴールデンウィーク」は、英語で色々な言い方が考えられますが、"5  consecutive  holidays"(5日間の連続した休日)というようなカタい言い方でなく、上のような言い方でいいと思います。